Sagoでピックアップ巻いてますー!(ギター編)
こんにちはー!
先日のSago Blogではベースのピックアップを
作っているところを紹介させて頂きましたが、
今回はギター編ということで、エレキギターの
ピックアップ製作について紹介させて頂きます。
桜村眞さん(和楽器バンド:町屋さん)の
アーティストモデル、時雨(6弦ver.)に
搭載されている
L(x) P-90 6string Shigure Customと
Sago ver.の虎徹に搭載されている
L(x) ST Type-2 虎徹Customを巻いていきますよー
1.ピックアップ製作で音が変わるポイント
ボインが同じ形状として、
ピックアップ製作で音が変わる要因は
大きく3つあります。
・マグネットワイヤーやポールピースの材質
・マグネットワイヤーの巻き方
・ポッティング(ワックス・ろう漬け)
この3つを軸に解説していきます。
2.マテリアル
マテリアルにこだわるSagoの楽器作り。
マグネットワイヤーは製作する
ピックアップの種類や
狙いのサウンドによって使い分けています。
定番のチョイスですが、ストラトタイプの
ピックアップにはヘビーフォームバー(オレンジ)を、
P-90タイプにはプレーンエナメル(茶色)を選定しています。
この2つは同じ導線ですが、
絶縁皮膜が異なり、
サウンドキャラクターの違いを
生み出す一つの要素となっています。
3.ボビンにテープを巻く
まずはST Styleのピックアップから。
ピックアップの種類によって少し異なりますが、
ボビンにマグネットワイヤーを巻いていきます。
はじめに組み上がったボビンのマグネットワイヤーに
テープを巻きます。
ポールピースに直接マグネットワイヤーを巻くと
ワイヤーとマグネットが導通してしまう
恐れがあります。
内側が導通していると、
巻き始めの内側がアースに落ちる可能性があり、
ロスの原因になるケースも。
従来のピックアップ制作では
ラッカー塗装でその役割を果たしていましたが、
塗りムラができたり、導通する可能性が残ってるので、
確実に導通を回避するためにテープを巻いています。
またポールピースが錆びてきた際に、
マグネットワイヤーが一緒に錆びてしまい、
内側から断線する恐れがあり、
それを防ぐ意味合いもあります。
※P-90はマグネットワイヤーが
ポールピースに直接当たらないため、
テープは巻いていません。
4.マグネットワイヤーを巻く
続いてマグネットワイヤーを
ボビンに巻きつけていきます。
巻き方によって音が変わるポイントは
大きく4つ挙げられます。
・巻くスピード、テンション
スピードが速いとマグネットワイヤーの
テンションが上がるので
音が締まる傾向にあります。
ボビンのサイズによって、
バネの強さと巻くのスピードを変えています。
・巻くピッチ(間隔)
ピッチが広いと重なり合う、
往復するポイントが増えます。
また同じ巻き数であってもピッチが広くなれば、
マグネットワイヤーの長さも比例して長くなるため
太めの音になり、外観的にも太く仕上がります。
ピッチが狭くなればスマートで、
タイトなサウンドに。
・巻く量(出力)
巻く量は出力の大きさが変わります。
巻く量を増やすことで、
ゲインが大きくなります。
一方で音がぼやける傾向にもあり、
繊細なサウンドコントロールが
求められるモデルでは巻き数を
若干少なめにしています。
・巻き方
マグネットワイヤーがボビンの中を
単に左右に往復するだけではありません。
クロスさせて巻く(クロスポイント)と、
独特の倍音が現れて、
立体的なサウンドを演出することが出来ます。
またボビンの上段→中央→下段のように
ボビンのエリアを分けて巻くこと
(ブロック巻き)により、余計なローエンド、
ハイエンドを軽減させ、
ビンテージ風のミドルを作り出す、
といったこともできます。
これらを組み合わせて、
狙いのサウンドキャラクターや
音響的にバランスの良いピックアップを
製作しています。
具体的なレシピは企業秘密なので、お伝えできませんが、、
どんな感じで巻いているかお見せしたいと思います。
時雨(6弦ver.)の
L(x) P-90 6string Shigure Customでは2種類、
虎徹のL(x) ST Type-2虎徹 Customでは3種類の
巻き方で仕上げています。
巻き始めはポールピースの
マグネットに近いことから、
サウンドキャラクターを決定づけます。
P-90タイプはポールピースと
直接マグネットワイヤーが接していないため、
初めからクロスで巻いていきます。
綺麗に巻くだけだと、
味気なく感じてしまい、
Sagoらしいサウンドにすべく、
試行錯誤しながら、
レシピを練っています。
途中で一旦止めて、
様子を見ながら巻き上げていきます。
巻き上がったらSTタイプは
マグネットワイヤーをハンダつけし、
P-90タイプはテープで止めて固定します。
5.ポッティング
マグネットワイヤーが巻き上がったボビンを
ワックスやロウで漬けることを
ポッティングといいます。
ポッティングすることにより、
巻いたワイヤーの隙間がワックスで埋まり、
共振しなくなります。
そうすることで大音量で出力した際、
意図としないハウリングを防ぐことができます。
また構成するパーツの多いハムバッカーは
各パーツの密着を高める目的でも行っています。
なおポッティングでマグネットワイヤーが
ワックスでコーティングされることにより、
高音域が抑えられます。
ビンテージを意識したピックアップでは
あえてポッティングしないケースもありますが、
Sagoではポッティングによる
音の変化も考慮してレシピを考えています。
ピックアップのコイルはモデルにもよりますが
約9,000回も回転しており、
常温のままワックスに浸しても、
コイルの中まで浸透しづらいのです。
そのためワックスを沸騰させ、
コイルを浸すのですが、
P-90タイプはボビンがプラスチック製のため、
あまりに高温だとボビンが
溶けてしまう恐れがあります。
そこで真空で沸騰させることにより、
融点が下がった状態でポッティングできます。
真空状態を作る装置に
ポッティングするコイルを入れます。
この「真空含浸」により、
コイル内の空気を吸い上げ、
短時間でコイル全体にワックスを
浸透させることができます。
なおワックスの融点が高いと伸縮し、
コイルを締め付けたり、
断線する恐れもあるため、
そうした影響の少ないワックスを選んでいます。
STタイプのピックアップも同様にポッティング。
ビンテージな風合いのサウンドに仕上がるよう、
隠し味に赤錆を入れています。
なかなか奥が深いです。
ワックスの中からコイルを引き上げて、
余計なワックスを除去したら
ポッティングは完了です。
6.ギターへ装着
出来上がったピックアップを
ギターへ取り付けていきます。
付け替える前のピックアップを
配線から取り外したら、一旦余計な
ハンダを取り除いていきます。
その後今回製作したピックアップを取り付け、
配線するとこんな感じに。
綺麗な見た目で、サウンドも
バッチリ仕上げていきます。
7.まとめ
Sagoではオーダーを頂く皆さんのご意見や、
マテリアルを考慮しながら、
ピックアップをお作りしています。
狙いのサウンドキャラクターに近づけたい、
サウンドを見直したいという際に、
ピックアップを交換することで解決ケースがあります。
Sagoでリプレイス用ピックアップを
ご用意していますので、ぜひご覧ください。
また今回制作した桜村さん(和楽器バンド:町屋さん)
モデルのピックアップ、こちらでお買い求め頂けますよ。
※タップすると販売ページへ。