Sagoでピックアップ巻いてますー(ベース編)

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こんにちは。

レーザー加工や印刷のピックガードなど、
ルックスに関するサービスが
充実してきました。

もちろん楽器として肝心のサウンドも
日々研究を続けています。

サウンドキャラクターを決定づける
一つの要因としてピックアップが挙げられます。

Sago創設当初は協力会社に
ピックアップの製作を依頼したり、
Nordstrand社製やBare Knucle社製の
ピックアップを搭載しておりました。

近年はよりSagoらしいサウンドを求めて、
Sagoの工房でピックアップを巻いていますよー

今回はこちらのベースのピックアップ製作に
ついて紹介させて頂きます。

1.ボビン製作

少し前から始めたレーザー加工。

ピックガードやボディトップの
デザイン加工に主に取り入れておりますが、
ボビンに使われるベースプレートも
このように加工しています。

ベースプレートはバルカナイズドファイバー
と言って、カバンや収納ボックス、
溶接時のお面など加工性、
汎用性に優れた人工素材
です。

最近Sagoでは1弦側は平行で、5弦に向かうにつれて
マグネットの配列が斜め
になる
新たなアイディアでピックアップを作っています。

1弦~5弦のバランス向上を目的とし、
これまでRidillDefiの多弦モデルでは
ヘッドデザインを工夫し、
Low-B弦のテンション確保に努めてきました。

そうしたアプローチと同様にピックアップでは
ボビンの配置により、低音弦~高音弦のどこで弾いても
バランスの良い鳴りを目指しています。

オリジナルデザインでピックアップを制作する際、
新たに導入したレーザー加工機によって、
自社でパーツ類を加工することができます。

レーザー加工ではボビンの穴は
若干小さめに加工されています。

マグネットがガッチリ固定されるよう、
最終は手作業で穴を調節しております。

緩い状態でボビンが組み上がってしまうと
マグネットワイヤーを巻いた際、
ワイヤーのテンションでボビンが広がったり、
最悪の場合には解体する恐れがあるので、
そうした不具合が出ないよう、細かいところは入念に。

加工後は樹脂のベタつきを取るのに
アルコールにひたします。

次にマグネットをベースプレートに装着していきます。
マグネットはアルニコ5といって、
エレキギターやベースではお馴染みの
マグネット素材を使っています。

アルニコとはアルミニウム、ニッケル、
コバルトを原料に鋳造された合金です。
原料の配合によって番号が区別され、
数字が大きいほど磁力が強くなります。

マグネットが全て装着できたら
接着剤で確実に固定し、

ジグを使って2mm、マグネットのアタマが出るよう
調整していきます。

ちなみにこのジグもレーザー加工で作りました。
レーザー加工って本当に便利なんです。

そしてマグネットのまわりを
テープで巻いたらマグネットワイヤーを
巻く前までの準備は完了です。

2.ボビンにマグネットワイヤーを巻く

次にボビンにマグネットワイヤーを巻いていきます。

マグネットワイヤーを巻く上で、
音が変わるポイントが大きく4つあります。

・巻くスピード、テンション
スピードが速いとマグネットワイヤーの
テンションが上がるので音が締まる傾向にあります。
ボビンのサイズによって、バネの強さと
巻くのスピードを変えています。

・巻くピッチ(間隔)
ピッチが広いと重なり合う、
往復するポイントが増えます。
また同じ巻き数であってもピッチが広くなれば、
マグネットワイヤーの長さも比例して
長くなるため太めの音になり、
外観的にも太く仕上がります。

ピッチが狭くなればスマートで、
タイトなサウンドに。

・巻く量(出力)
巻く量は出力の大きさが変わります。
巻く量を増やすことで、ゲインが大きくなります。
一方で音がぼやける傾向にもあり、
繊細なサウンドコントロールが求められるモデルでは
巻き数を若干少なめにすることもあります。

・巻き方
マグネットワイヤーがボビンの中を
単に左右に往復するだけではありません。

クロスさせて巻く(クロスポイント)と、
独特の倍音が現れて、立体的なサウンド
演出することが出来ます。

またボビンの上段→中央→下段のように
ボビンのエリアを分けて巻くこと(ブロック巻き)により、
余計なローエンド、ハイエンドを軽減させ、
ビンテージ風のミドルを作り出す、

といったこともできます。

これらを組み合わせて、
狙いのサウンドキャラクターや
音響的にバランスの良いピックアップを
製作
しています。

今回のピックアップは
こちらのOve5 36inch取り付けすることを考慮し、
パワー感のあるサウンドに仕上がるよう巻き数を
通常のJBタイプのものより上げています。

巻きはじめはクロスポイントで、
サウンドキャラクターをつけていきます。

ある程度巻いたところで、
今度はボビンへ均等にマグネットワイヤーを
巻いていきます。

途中で綺麗に巻けているか様子を見ながら、
巻き上がりを待ちます。

4.ポッティング

マグネットワイヤーが巻き上がったボビンを
ワックスやロウで漬けることを
ポッティングといいます。

ポッティングすることにより、
巻いたワイヤーの隙間がワックスで埋まり、
共振しなくなります。

そうすることにより大音量で出力した際、
意図としないハウリングを防ぐことができます。
また構成するパーツの多いハムバッカーの場合は
各パーツの密着を高める目的でも行っています。

なおポッティングでマグネットワイヤーが
ワックスでコーティングされることにより、
高音域が抑えられます。

ビンテージを意識したピックアップでは
あえてポッティングしないケースもありますが、
Sagoではポッティングによる音の変化も
考慮してレシピを考えています。

ピックアップのコイルはモデルにもよりますが
約9,000~12,000回も回転しており、
常温のままワックスに浸しても、
コイルの中まで浸透しづらいのです。

そのためワックスを沸騰させ、
コイルを浸すのですが、
真空で沸騰させることにより、
融点が下がった状態で効率よく
ポッティングできます。

真空状態を作る装置に
ポッティングするコイルを入れます。
この「真空含浸」により、
コイル内の空気を吸い上げ、
短時間でコイル全体にワックスを
浸透させることができます。

ポッティングしたボビンを取り出し、
余計なワックスを取り除きます。

5.ウッドピックアップカバー

ポールピースの配置が特殊なので、
それに合わせてピックアップカバー
Sagoで自作
しちゃってます。

サイズを固定することで、ビックシングル、
ハムバッカー、通常のJBタイプなど
ピックアップのスタイルに関係なく
搭載することができます。

すでにOveRidillをお持ちの方であれば、
ザグリ加工なしでピックアップ交換ができますよ。

ちなみにピックアップカバーは木製(メイプル)。

こだわって手作りしているパーツなので
製作しているところを少し紹介させて下さい。

NCルータで型取りしたカバーへまず、
マグネットの配列に合うよう
穴を空けていきます。

またピックアップをボティーに取り付ける
ビス用の穴もこのように加工していきます。

この後、外周のR加工を行ったり

全体を研磨するなど丁寧に磨いています。

木工加工が終わったカバーがこちら。

ベースの指弾きでフィンガーランプの役割にもなるので
手触りよく、心地よいプレーができるよう
一つずつ丁寧に仕上げます。

加工後は塗装を行います。

Stem Ove4のようにレギュラーモデルカバーは
このようにブラックに染め上げます。


ですが今回はあえて真逆のホワイトに。
木目が見えるように色味を少し薄く。

ちなみにこんな風にピックアップカバーへ
ラップ塗装することだってできますよ!

ボビンをピックアップカバーに取り付けたら、
ボディに装着していきます。

6.サウンド

気になるサウンドはぜひYouTubeで
聴いてみてください。

Sago Ove5 36inch (ホワイトアッシュボディ)

7.まとめ

ピックアップもSagoらしいアイディアで製作し、
Sagoのサウンドを追求しております。

サウンドの見直しにSagoが作るピックアップ
ぜひ試してみて下さいね。