ピックの選び方【超・徹底解説】

最終更新日:  公開日:



ピックといえば、各メーカーから多彩なカラーやデザインの製品が展開されており、見た目に惹かれて購入する方も少なくありません。

もちろん、モチベーションが上がる“お気に入りのデザイン”を選ぶことも大切ですが、実はピックの「素材」や「厚み」は、あなたのプレイスタイルや音色に大きな影響を与える重要な要素です

そこで今回は、ピックに使用される素材の中でも特にメジャーな4種類にフォーカスし、それぞれの特徴や向いている演奏スタイルを解説します。

ご自身の演奏スタイルや目指すサウンドにぴったりの素材を見つけて、演奏のクオリティをさらに高めましょう!

素材①:セルロース

セルロース(セルロイド)は、ギターピックの素材として歴史が古く、長年にわたり広く使用されてきた代表的な素材です。

適度なしなりと柔軟性を持ち、演奏時のコントロールがしやすいため、初心者から上級者まで扱いやすいとされています。

アタックは柔らかく、音色は温かく丸みがあり、耳障りになりやすい高域成分(ジャリつきやピーキーな倍音)を抑えてまとまりのあるトーンを生み出します。
この特性により、アコースティックギターやエレキギターにおけるコードストロークにも非常に適しています。

一方で、耐摩耗性は高くなく、他の材に比べて削れやすい傾向があります。また、湿気や熱に弱いため、変形や変色が起こりやすく、保管や使用環境には注意が必要です。

◆ 柔軟・丸みのある音・温かみ、滑らかで自然なトーン、ジャリつきが少なくストローク向き(ヴィンテージ/コード向き)

素材②:ポリアセタール

ポリアセタールは、ギターピック素材として広く使われている高機能樹脂で、中音域がタイトで輪郭のはっきりしたクリアなトーンが特徴です。

ピッキング時の音の立ち上がりが明瞭で、速いフレーズやリフプレイでも粒立ちの良いサウンドが得られるため、速弾きやアタック重視のプレイスタイルに適しています。

硬質な素材ながらも、ピックとしては適度なしなりを持ち、弦への当たりがスムーズで、アタックが鋭すぎることなく扱いやすさも兼ね備えています。そのため、アルペジオやリードプレイでも一貫したレスポンスと滑らかな演奏感が得られます。

耐熱性・耐摩耗性に優れた粘りのある素材のため、消耗を抑えたい方やハードなピッキングを多用するプレイヤーにもおすすめの素材です。

◆ 中硬度・タイトな中音域・安定したアタック、均一なレスポンスと高い耐久性(万能型・速弾きやリフ向き)

素材③:ウルテム

ウルテムは、非常に硬質でシャープなトーンが特徴の素材で、特にハイミッドの明瞭さと音抜けの良さに優れています。

演奏時の感触や弦への反応が「爪に近い素材」として高く評価されており、レスポンスが速いため、ピックの角度や力加減といった微細なニュアンスも音に反映されやすいのが特長です。
そのため、ピッキングの表情を明確に表現したいプレイヤーに適しています。

また、ウルテム製ピックは非常に硬く、しなりが少ないため、ピックのしなりを活かすようなストローク奏法にはやや不向きな場合があります。

さらに、高い強度と耐熱性を持ち、摩耗や変形に強く、長寿命のピックとしても高く評価されています。その硬質な性質ゆえに柔軟性が乏しく、強い力が集中すると割れてしまうことがあるため、少し注意が必要です。

◆高硬度・高音抜け・耐熱性、ハイミッド強調、明瞭でパワフルな音(テクニカル向き)

滑りやすさは?

※本比較に使用しているピックは、弊社オリジナル製作例に基づくものであり、同じ素材であってもメーカーごとに表面加工や処理に違いがあるため、あくまで弊社事例としてご参考ください。

左:セルロース
中心:ポリアセタール
右:ウルテム

3種類を並べてみると、セルロースとウルテムは艶っぽく、ポリアセタールはマットな質感という印象を受けます。

セルロースやウルテムにさらに光を当ててみると、表面は完全な鏡面ではなく、うっすらと細かな擦り傷のようなテクスチャがあります。そのため、握ったときに手の湿気とわずかに反応して、「キュッ」と吸い付くようなグリップ感があり、しっかり止まってくれます。

一方、ポリアセタールは見た目通りさらっとしたドライな手触りが特徴です。表面は乾いた質感ながら、素材自体の摩擦係数が高いため、一般的には最も滑りにくいとされています。ただし、このさらさら感を逆に滑りやすいと感じる人もいるかもしれません。

正直、セルロース・ウルテムとポリアセタールでは滑りの感触がかなり違うため、順位がつけがたく好みによる部分が大きいと感じました。

実際のグリップ感は、単純な摩擦の大小だけでなく、手の湿度との相性によっても左右されます。
手の湿度には個人差もあるので、楽器店などでピックを見かけた際は、ぜひ手に取って、そのグリップ感を確かめてみてください!

ピックが滑って困る場面といえばやはり汗。

そこで今回は、3種類の素材を使ったピックを水に濡らし、汗をかいた状態を想定してグリップ感の違いを比較してみました。

セルロースやウルテムは、濡れると指先が滑りやすくなり、グリップ感がやや弱まる印象。
一方、ポリアセタールは濡れる前と特に滑りやすさは変わらず、グリップ感を保っていました。

汗をかきやすいプレイヤーには、ポリアセタールがおすすめです

厚みの関係

素材によってサウンドやしなりに違いがあることを紹介しましたが、ピックの厚みもそれらの要素に大きく影響を与えます。

むしろ、厚みを変えることで素材の特性をより引き出したり、音や演奏感を自分好みに近づけたりすることが可能です。

厚み特徴主な用途や感触
Thin
~0.5mm
よくしなる/柔らかい/軽いアタックアコギのストロークやコードプレイ/音が軽やかでジャラっとした質感
Medium
0.8~0.9mm
適度なしなり/均整の取れたアタックストロークと単音弾きのバランス型/オールラウンド
Heavy
1.0mm~
しなりが少ない/鋭いアタック/音が太いリードプレイ、速弾き、ニュアンス表現/ピッキング精度が求められるスタイル向け
Extra Heavy
1.5mm~
ほぼしならない/最大限のレスポンス/重厚な音テクニカル系、ジャズ・フュージョン/滑らかで硬質な音色

エレキギターでは0.8~1.0あたり、ベースでは1.0mm~が標準的な厚みといわれています。

シェイプ

演奏性に大きく影響するシェイプ。

今回は代表的なトライアングル・ティアドロップ・ジャズの特徴を紹介します。

ティアドロップ型

ティアドロップ型は、最も一般的で汎用性の高いピック形状のひとつで、エレキ・アコースティック問わず多くのギタリストに親しまれています。しずくのような形をしており、持ち手側は緩やかに広がり、先端に向かって細く鋭くなるデザインが特徴です。

この先端形状により、弦に触れる面積が小さく、軽い力でもスムーズにピッキングが可能です。アタックがきつくなりすぎず、音のまとまりも良いため、コードストロークからメロディ弾き、アルペジオや単音リードプレイまで幅広く対応できる万能型です。

持ち替えなしでストロークも単音もこなしたいプレイヤーにとって、最初の1枚としても安心して選べる形状です。

トライアングル型

トライアングル型は、正三角形をベースとした形状で、国内では「おにぎり型」とも呼ばれています。面積が広く、指との接触面が大きいため、グリップ性に優れ、安定した保持感があります。

角が消耗してきたら他の角を使う。というように3つの角を使用できるので、摩耗しても長く使えるというメリットもあります。

その握りやすさからストローク主体のプレイヤーや、ピックを落としやすい方、指が大きめの方にも人気があり、また弦のテンションが強いベースギターのピック奏法においても、トライアングル型は定番として広く使われています。

ジャズ型

ジャズ型は、ティアドロップ型をさらに小型化し、先端をより鋭角に仕上げた形状です。全体にコンパクトで、持ち手に対して鋭く尖った先端が特徴的で、弦に当たる面積がさらに小さい分、ピッキング時の反応が非常に速く、タイトなアタック感が得られます。

その名のとおり、もともとはジャズギタリストの正確で緻密なプレイに適した設計ですが、レスポンスの良さ・高精度なコントロール性・タイトな音像が評価され、速弾きやテクニカル系、メタルプレイヤーにも愛用者が多い形状です。

ただし、保持面積が小さく慣れが必要なため、初心者よりもある程度のコントロール力を持つプレイヤー向けではあります。

トライアングルは一般的に面積が広いものが多いですが、左から2番目のような小さいトライアングル型もあります。

サイズが小さくなることにより、細かいコントロールが効きやすく、ピッキングのニュアンスもより繊細に表現しやすくなります。

角の形状は、左の標準サイズのトライアングルと同じく丸みを帯びているため、ティアドロップ型やジャズ型に比べて音にはやや柔らかさが残りますが、演奏感としては近いものがあり、軽快な取り回しが可能です。

このように、同じシェイプでも「サイズ」や「角の丸み」によってさらに自分好みを追求していくことができます。

まとめ

いかがでしたか?

今回はピックの「素材」「厚み」「シェイプ」それぞれの違いについて、特徴と影響を徹底的に解説しました。

これまでなんとなく「弾きやすい」「しっくりこない」と感じていたことも、素材の特性や形状による違いを知ることで、その理由がはっきり見えてきたのではないでしょうか。

最終的な弾き心地や音色は、素材・厚み・形状それぞれの組み合わせによって生まれるものです。自分の演奏スタイルや感覚に合ったピックを、ぜひ見つけてみてください。

もちろん、自分だけのこだわりを込めた“オリジナルピック”の製作も大歓迎です。
Sagoが全力でサポートいたします!

「Sago」は2004年に創立した、ギターメーカーです。
エレキギター・ベースを基本に、スタンダードなモデルや弊社プロデュースのモデル、フルオーダーまで幅広く製作をしています。
豊富なアイデアと技術で、お客様の理想の一本を製作させていただきます。

トップページはこちら