もう一つのホロウモデル「Curious Flat Top」について

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こんにちは、SagoNMG工房です。

全記事で紹介した「Curious Arched Top」に続き、今回は「Curious Flat Top」について解説していきます。

Curious Flat Topに関しては、製作者である職人がリニューアル後の仕様やこだわりについて解説していますので、ぜひ動画をご覧ください。

1. マテリアル

【リニューアル前の仕様】
ボディトップ:ハードメイプル
ボディバック:アフリカンマホガニー
ネック:アフリカンマホガニー
指板:インドローズ

【Curious Flat Topの新仕様】
ボディバック:欅
ネック:楢
指板:マニルカラ

となっており、以前の仕様から木材を一新しました。

Sagoが積極的に和材を使いだしてから、ギター・ベース共に人気の高い「欅」

欅は力強いミッドとアタックが特徴で、重みのある木材です。

Curiousのようなセミホロウ・セミアコと相性が良く、ホロウ構造で犠牲になりやすい音の輪郭や芯を補い、適度な重さに仕上げることができます。

続いてネック材の「楢」

楢は和材の中でも強度があるため、弊社ではネック材として採用しています。

Curious Flat Topではスカーフジョイントという構造で、ネックとヘッドを角度あり(10度)で接着しています。

通常のスカーフジョイントはグリップ側(1フレットあたり)を接合のポイントにしているものもありますが、経年変化で剥がれやネックの波打ちの原因になる恐れがあります。それを防ぐため、ヘッド側で接合し、さらに両側から挟み込むように接着することで十分な強度を出しています。

ヘッド角度がある場合、木材に十分な厚みが必要になり材も限定されていきます。木材が枯渇している今、木材を有効に活用するため1枚分の材で製作できるスカーフジョイントを採用しました。

指板材は「マニルカラ」

硬さ・粘りがあり安定しているので、指板におすすめです。

ホロウモデルで、ボディ・ネックが和材ということもあり、音がソフトになり過ぎないよう硬さのある材を選定しました。

2. ピックアップ

以前はハムバッカーを搭載していましたが、新仕様ではJMタイプのPUに変更しました。

この独特なクリスピーさ・太さのあるサウンドがビザールギターをコンセプトにしているCuriousにマッチすると思い採用しました。

なおシリーズ接続で使用することも見越して、音が太くなりすぎて扱いにくくならないよう、コイルの巻き数を少しだけ落としています。

3. コントロール、スイッチ類

2Volume+1Tone+Toggle SW +Series/Parallel SW

シリーズ/パラレルスイッチが付いており、2つのPUを直列接続に切り替えることで、擬似的にハムバッカーのような太い音を出力することができます。

スイッチは図のように切り替えることができ、①と③がシリーズ、②がパラレル接続です。

ではリアPUのボリュームがマスターボリュームとなり、フロントPUはブレンダーとして、ボリュームを下げていくことで、シリーズのサウンドでありながらリアPU寄りの音を出力することができます。
フロントPUのボリュームを0にするとリアPU単独のサウンドになり、パラレル接続のリア単体と同じです。

ではフロントボリュームがマスターボリューム、リアPUがブレンダーの役割に。

なおフロントPU、リアPUのボリュームが共にフルテンの場合、①と③は同じ音になります。

また、パラレル接続でのミックス時も各々のボリュームが影響し合わないので、より繊細に音作りをすることが可能です。

動画の3:10秒あたりからコントロールについて解説しています。

4. ブリッジ

ストップバーテールピースからの変更で、Classic Style JMと同じく、Offset Vibratoを。
ブリッジにはGotoh GE103B-Tを搭載しています。

Gotoh GE103Bは弦落ちしにくく、チューニングの安定性やサスティーンの向上につながります。

5. 構造について

Curious Arched Topは従来の要素を多く受け継ぎ、ホロウの要素をさらに増やしたモデルとなっていますが、Curious Flat Topではソリッドの要素を多く取り入れており、それぞれのモデルのコンセプトを明確に分けています。

2つのモデルについて比較していくと

【スケール】
Arched Top:628mm
Flat Top:648mm

【ジョイント】
Arched Top:セットネック
Flat Top:ボルトオン

ホロウのモデルではありますが、シングルピックアップとの相性やアタック感を考えボルトオンに変更しました。

またOffset Vibratoの場合、ボールエンドからブリッジの距離が遠くなるため、ブリッジにかかる角度がゆるく弦を押さえた時のテンション感が弱くなってしまいます。そこでヘッド側に角度を付けることでテンション感を稼ぎ、648mmにすることで張りのあるサウンドを確保しています。

なおスケールやジョイントについては、どちらのモデルでも変更が可能です。
弊社の製作はカスタムオーダーが基本ですが、ラインナップのモデルの仕様からスケールやジョイントなどの構造をカスタムした場合、アップチャージが大きくかかります。このCuriousは同じボディシェイプに対しパターンを増やしているので、データ作成などのアップチャージがかからずにカスタムすることができます。リニューアル時にカスタムオーダーがしやすいようにという思いも込めこのような仕様に決定しました。

6. ホロウのエリア

Curious Arched Top

Curious Flat Top

Arched Topはほぼボディ全面がホロウであるのに対し、Flat Topはソリッドボディの割合が多いです。

ボディ左部分を大きく削り、右の角部分もホロウになっています。コントロール部も裏ザグリで大きめに削っているので、サウンド面ではホロウ感を強め、カスタムオーダーではコントロールの自由度を上げています。

7. サウンド

セミホロウモデルですが、ジョイント部〜ブリッジ〜エンドピンまでのエリアがソリッドボディということもあり、TD-035やCurious Arched Topほどのエアー感はありません。

ですが欅ボディや樫ネックによる和材の組み合わせによって、クリーントーンではメロウなサウンド。
コーラスやリバーブを掛けると、綺麗に鳴ります。

そしてドライブサウンドではエアー感を含ませながらも、JMサウンドらしいクリスピーさ、あの独特な音の感じがお楽しみ頂けます。

YouTubeにて試奏動画を公開していますので、ぜひお聞きください。

やはり面白いのはシリーズ/パラレルの3点スイッチです。

弊社のオーダーでも好評なシリーズ/パラレルスイッチですが、一般的にシリーズ状態では2つのピックアップが強制的に鳴り、片方のピックアップの混ぜ具合を調整するということはできません。

この3点スイッチではシリーズ接続の状態でフロントPU寄り、リアPU寄りに音作りすることができるので

・リードギターを弾く際、フロントPU・リアPU両方フルテンだと音が太すぎるので、スッキリさせるためにリアPU寄りに音作りする。
・優しい音でアルペジオをしたい際、フロント単独では煌びやかな感じがするので、シリーズ接続の状態でフロントPU寄りにマイルドに音作りする。

などなど個人に合わせた音作りをしていただけたらと思います。

こちらのモデルはクロサワ楽器ミーナ天神店さんの店頭にて試奏・購入いただけますので、気になった方はぜひ一度試奏してみてください!

まとめ

従来の仕様を受けついだCurious Arched Topに比べ、仕様を一新し大きく生まれ変わったCurious Flat Top。

ビザールギターといえば、見た目もサウンドも特殊なイメージがありますが、Curiousはそうしたキャラクターにこだわりつつジャンルやシチュエーションを選ばず、長くお使い頂けるギターです。

「Sago」は2004年に創立した、ギターメーカーです。
エレキギター・ベースを基本に、スタンダードなモデルや弊社プロデュースのモデル、フルオーダーまで幅広く製作をしています。
豊富なアイデアと技術で、お客様の理想の一本を製作させていただきます。

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