指板R(カーブ)について

指板と聞くとボディやネックに比べあまり目立たないように感じますが、演奏の際に指が常に触れる部分であり、音階を出すフレットが打たれている楽器のとても重要な役割をもっています。
指板R
指板を断面から見てみると、平坦ではなく緩やかなカーブが付いてます。
これが指板Rと呼ばれており、スペックなどにはRadius(半径)の頭文字のRをとって表記されています。
(例えば半径が240mmの場合は240R、インチ表記の場合は9.5R。)
数字が小さいほどカーブはきつく、大きいほど緩やかになります。
7.5インチ ≒ 185mm | ![]() |
9.5インチ ≒ 240mm | ![]() |
10インチ ≒ 255mm | ![]() |
12インチ ≒ 305mm | ![]() |
14インチ ≒ 355mm | ![]() |
一般的にフェンダー系のものは7.5インチや9.5インチなどカーブのきついものが多く、ギブソン系のものは12インチなどカーブが緩いものが多いです。
演奏性にどんな違いが出るのか?

楽器の弾きやすさのポイントとして弦高の低さがあります。
弦高が高いと弦とフレットの間隔が大きくなるので弦を押さえるのに強い力が必要になりますが
弦高が低いと弱い力で押さえることができ、チョーキングなどの演奏性が高くなります。
基本的には弦高が低い方が全体的に弾きやすさはアップしますが、低ければ低いほどいいのか。というとそうではなく、弦高を下げすぎると弦の振動の際にフレットに当たってしまってビビリが出たり、チョーキング際に音が詰まり途切れてしまうことも…。
そうしてバランスを取りながら調整を行うんですが、このビビリやチョーキングの音詰まり、弦高の下げやすさには実は指板Rの大きさも大きく影響しているんです。
なぜカーブの大きさで違いが出てくるの?
指板と弦は、一見どちらも並行に沿っているように見えますが、実はRに差があります。

指板は正面から見るとナット側が細く、ブリッジ側にかけて広がるような台形の形をしていますが、付いているRは全て一定で円柱状です。
一方弦はナット側からブリッジ側にかけてカーブがだんだんと緩やかになっていく円錐状のカーブになっています。
つまり弦と指板のカーブにはズレが生じていて、各弦によってもそのズレ方に違いがでています。
そしてきついカーブになればなるほど、ハイポジションに行くにつれて大きなズレになっていくわけです。
例えば3.4弦に合わせてネック調整を行うと、1.6弦側は逆反りの状態になりハイポジションでの指板との距離が遠くなっていきます。
反対に1.6弦に合わせて調整を行うと3.4弦は順反りの状態になっていきます。
このようにネックの中心、もしくは両端どちらかだけに合わせてネックの調整をすると、反する弦の位置では必要以上にネックが反った状態になり、弦高を高めに設定する必要が出てきます。
そのため各弦の位置でバランスが良くなるようにネックの反りを調整するのですが、物理的にズレを無くすことはできないので、ある程度の弦高が必要になります。
ただこの問題はフレットの擦り合わせによってかなり軽減することができるため、ほとんどのメーカーはそのような擦り合わせを組み込みの際に行っています。
しかし、削りすぎると各弦の位置によってフレットの高さがバラバラな仕上がりになりますし、フレットの寿命にも影響が出てきますので、プレイスタイルに合わせて指板のRを選ぶことが大切です。
きついカーブになるほど弦と指板のRのズレが大きくなりますので、ハイポジションでの弦高が高くなり、チョーキングでの音詰まりも発生しやすくなります。
その反面、ハイポジションでの弦とフレットのクリアランスが広いので、ローポジションでのコードプレイなどでより力強い弦の鳴りを生み出すことができます。

ナットから指板エンドにかけてだんだんとカーブが緩やかになっていくコニカルラディアスというRの付け方もあります。
そうすることで各弦に指板面が沿う形になり、各弦のズレを無くすことができます。
ローポジションとハイポジションの弦高の差が小さくなり、結果的に低い弦高にセッティングしやすくなります。
おすすめは?
ここまでの話を聞いていると、弦高が低いと弾きやすい→緩いカーブの方が弦高が下げやすいからカーブが緩い方がいいのか。と思う方も多いと思うんですが、絶対に緩いカーブがいい!というわけではなく、プレイスタイルによってもおすすめが変わってきます。
緩いカーブがおすすめの人
低い弦高が好き。
ハイポジションの使用頻度が高い。
より高音までのチョーキングや速弾きやタッピングなどテクニカルなプレイスタイル。
きついカーブがおすすめの人
グリップを握りこむフォーム。
コードプレイやカッティング、バッキングが主体のプレイスタイル。
力強いピッキングで張りがあり抜けのいいサウンドが好き。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
カーブが緩い方が弦高を下げやすいというのは割とよく知られていると思いますが、なぜそうなっているかのの部分も分かっていただけたんじゃないでしょうか。
弊社でもオーダーの際によく指板Rのカスタムをいただきますが、結構人によってばらばらで「普段ジャズベースに慣れているから握りこみやすいのがいい」という方や、「緩いカーブに慣れているからきついカーブだと両端の弦を押さえた時の落ち方が気になる」という方など好みは様々です。
ぜひ皆さんも自分の弾きやすい指板Rを見つけてくださいね!